概要・アクセス

重要文化財 三十番神図 長谷川等伯(信春)
1幅 絹本着色 94.5×39.1㎝ 永禄9年(1566)富山(高岡市)・大法寺蔵
重要文化財 三十番神図
当代随一の仏画

 信春時代に描いた仏画の中でも、とりわけて華麗な色彩が施されています。 三十番神は、ひと月三十日の一日ずつに一神をあてて守護神とされた、法華経ほけきょうを信仰する人たちを守る善神です。
 大法寺には本作品と永禄7年(1564)、等伯が26歳の時に描いた「 日蓮聖人像にちれんしょうにんぞう 」など3幅の仏画がともに伝わっています。それぞれは、丹念に細かく描写されていて、信春時代の日蓮宗関連の画業に携わる活動内容と作風の特色が色濃くうかがえます。

重要文化財 日堯上人像
重要文化財 日堯上人像
天下無双の肖像画

 白い法衣をまとう本法寺の第8世日堯上人が説法する姿。上人の清らかな人格が描写されているかのようです。
 この作品の署名によって等伯と信春という絵師が同一人物であると確認され、昭和13年(1938)、 土居次義どいつぎよし氏が「長谷川等伯信春同人説」を発表されることとなりました。そういう意味で、長谷川等伯研究史上、極めて重要な作品です。
  等伯の生家奥村家の菩提寺は能登にある日蓮宗寺院の本延寺ほんねんじで、本山が本法寺でした。等伯はこの本法寺の伝手つてによって上洛し、京都や堺で活動しました。

花鳥図屏風 長谷川等伯(信春)6曲1隻 153.7×349.8㎝ 紙本金地著色 16世紀 個人蔵
花鳥図屏風
世紀の新発見

 本展覧会にかかわる作品調査によって、等伯の真筆であることが分かった作品です。金碧画きんぺきが の花鳥図で、松や藤の花、滝の流れなどが優美に描かれています。松の樹皮や枝ぶり、鳥の描写などから等伯が「信春」と名乗っていた40歳前後の作品とみることができます。智積院の金碧障壁画を描く前から金碧画制作の実績を積んでいたことを示す極めて重要な作品です。

国宝 楓図4面 (各172.5×139.5㎝) 紙本金地着色 文禄2年ころ(1593年)京都市・智積院蔵
国宝 楓図(かえでず)
国宝
松に秋草図屏風 4面・2曲1双 各172.5×139.5㎝ 各228.0×331.0㎝ 紙本金地着色 文禄2年(1593)ころ 京都・智積院蔵
松に秋草図屏風
極楽往生を願う金碧画

 天正19年(1591)、3歳で夭折した豊臣秀吉の長男、 鶴松つるまつの菩提を弔うために建立された京都の祥雲寺(現在の智積院)に描かれた障壁画。70㎝を越える太い幹の楓は、両腕を広げるように雄々しい姿で描かれ、紅葉や木犀もくせい鶏頭けいとう、萩、菊の草木は、幼くして亡くなった鶴松を包み込むように優しく画面を彩っています。
 ライバル狩野永徳かのうえいとくが創り上げた、画面から飛び出さんばかりの巨木などの対象を描く「大画様式たいがようしき」を意識しながら、狩野一門の作品にはみられない自然描写をみせ、なおかつ叙情性を備えた長谷川一門独自の美的特質が、みる者の目を奪います。

重要文化財 利休居士像 春屋宗園賛 長谷川等伯 1幅 80.6×36.7㎝ 絹本着色 文禄4年(1595)京都・表千家不審菴蔵
利休居士像
天下の茶人との交流

千利休没後5年目に描かれた肖像画。利休の個性が余すところなくあらわされています。等伯が生前の利休に相対し、その表情を写しとった画稿をもとに描いたもののようで、リアリティに富んだ描写がなされています。
  絵の上部に記された漢詩は、三玄院住職の春屋宗園が記しました。宗園、利休、等伯の三人は大徳寺三門の増築建立の場で合いまみえています。彼らの交わりをうかがう上で、極めて貴重な肖像画と言えます。

重要文化財 枯木猿猴図 長谷川等伯2幅 各155.0×115.0㎝ 紙本墨画 16~17世紀 京都・龍泉庵蔵
枯木猿猴図

東京国立博物館:前期陳列(2010年2月23日~3月7日)
京都国立博物館:後期陳列(2010年4月27日~5月9日)

縦横無尽の筆の技

当時もてはやされた中国の画家牧谿もっけいの国宝「 観音猿鶴図かんのんえんかくず」(大徳寺蔵)の猿図に学びながら、換骨奪胎して自らの筆法であらわしています。ふわふわとした猿の柔らかな体毛と力強い樹木の輪郭線のコントラストが等伯の水墨画の真骨頂です。

重要文化財 仏涅槃図 1幅 792.8×521.0㎝ 紙本着色
慶長4年(1599)京都・本法寺蔵
仏涅槃図
三大涅槃図のひとつ

釈迦(ブッタ)の入滅の様子を描いています。弟子たちや動物たちが集まり、釈迦の死を嘆き悲しんでいます。
  華やかな表装を含めれば、高さ10mにおよぶこの大涅槃図は、完成時に宮中で披露された後、等伯によって本法寺に寄進されました。首を上下左右にゆっくりと振らなければ全貌をみることはできない、その迫力が観る者を圧倒します。

重要文化財 烏鷺図屏風 6曲1双 各154.5 x 355.5cm 紙本墨画17世紀 千葉・川村記念美術館蔵

東京国立博物館:後期陳列(2010年3月9日~3月22日)
京都国立博物館:前期陳列(2010年4月10日~4月25日)

烏鷺図屏風
生きるものへのまなざし

 晩年の代表作。流麗な筆のタッチで形作られた樹木を背景に、左に黒光りするカラスと右にサギを描いています。カラスはぐるぐると激しく争い、サギはおだやかに飛翔し、羽を休めています。黒と白、動と静の強いコントラストが画面を満たしています。
  等伯は、カラスやサギのほか、猿や虎など動物たちをしばしば描いていますが、それらの表現には動物たちへの優しいまなざしが感じられます。

国宝 松林図(しょうりんず)屏風 6曲1双(各156.8×356.0㎝)紙本墨画
16世紀 東京国立博物館蔵
松林図屏風

 永徳亡きあと、画壇の覇権を左右する大事な局面で祥雲寺障壁画制作を競い取り、見事成功させた等伯一門。狩野派を凌駕りょうがする最大の好機に思われましたが、障壁画完成直後、将来を嘱望した息子・久蔵きゅうぞうが26歳で急逝してしまいます。無限の広がりを見せる墨の諧調と余白の美を、極限まで追求したこの絵は、近づきがたい気品と離れがたい吸引力を併せ持ち、哀しいほどの美しさで人々を魅了してきました。その不思議な魅力の背景には、次代を担うはずの才能溢れた息子を失った等伯の悲しみが隠されているのかもしれません。

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